ご機嫌な職場日記

高橋克徳 連載コラム 「組織と人のイノベーション」① 2013年9月24日

第1回 なぜ、またイノベーションなのか?

 あなたは、イノベーションと聞くと、どのようなイメージを持っていますか?
世の中にない画期的なものを生み出す、従来のやり方を大きく変える、新たな知を創造する、社会に大きなインパクトを与える ・・・。

 確かに究極のイノベーションとは、こうした人々の生活を飛躍的な高めるような非連続な変化を生み出すことです。そんな大きな変化をあなたは起こしたことがありますかと聞かれると、多くの人たちは困ってしまうのではないでしょうか。イノベーションという言葉が、自分にとってはかなりハードルの高い、自分には縁遠い言葉のように感じる人が多くいるように思います。

ところが、イノベーションという言葉が今、多くの現場に求められるようになってきています。実際に、ビジネスモデル・イノベーション、デザイン・イノベーション、リバース・イノベーション、オープン・イノベーション、ソーシャル・イノベーションなど、多くの言葉が書籍や論文で発表され、イノベーションという概念があらためて脚光を浴びてきています。

それぞれのコンセプトや手法がどういうものかは、今後取り上げていきますが、どうして急にイノベーションに関する議論が増えてきているのでしょうか。従来のイノベーションの議論とは何が違うのでしょうか。

 イノベーションの議論が増えている直接的な要因は、このままコスト競争を続けていても生き残れないという危機感です。グローバル・コスト競争による消耗戦で、企業も現場もすでに限界に来ています。中国やアジアに展開して、生産拠点をつくり、徹底したコストダウンを追求しても、急に出てきたアジアの企業に追い抜かれる。それこそ、コスト面で負けているだけなく、現地のニーズを汲み取った細かな工夫の差、マーケティングの差で負けていく。品質や技術を追求すれば、日本製品は負けないという時代ではもうなくなったということです。

そうした状況の中で、従来のイノベーションとは異なるイノベーションが求められてきています。それは、イノベーションといっても、その価値が顧客や市場、ひいては社会にとって、大きな意味あるものでなければ、多様性の一つとして埋もれていくということです。商品やサービスのバリエーションが増えすぎて、顧客からすると価値の差が見えない。いくら技術的に優れたものをつくっても、それが自分の生活を大きく変えるものにならなければ手を出さない。特に新興国の市場に受け入れられるものは、よりシンプルで低コストだけれども、生活を一変させる、普遍性の高いものを生み出す必要がある。さらに、こうした新興国、後進国で生み出された革新が先進国にフィードバックされることで、より根源的なニーズに気づいていく。今求められているのは、成熟化社会における生活や社会のあり方を根幹から変える本質的なイノベーションなのです。

 そして最後に、イノベーションを技術革新がともなう製品やサービスの開発という視点や製造技術の革新という特定要素の革新という考え方から、むしろ製品とサービスおよびその生み出し方までも含めた、プロセス全体の革新、あるいは価値の創造と届け方の革新という広い視野で捉えるようになってきているということです。一人ものづくり、マイクロものづくりが注目されてきていますが、基本的な知識と、独自のアイデアがあれば、一人でもものづくりができ、販売できる時代にもなりました。インターネットを通じて、自分のアイデアへの賛同者が集まれば、生産、販売のプロと組んで、新しい製品やサービスを創造することができる。世界の、そして日本の中にある、今まで簡単に出会えなかった人たちと、思いを共有し、知恵や技術を持ち寄り、大きな革新を起こせるようになってきたのです。

 先進国は成熟社会となり、環境問題が深刻になる中で、どう生きていくかが問われています。新興国や後進国は、命の危険にさらされる、生きるためにまだまだ多くの知恵と技術を必要としています。この二つのニーズは切り離されているのではなく、つながっていきます。世界という目線で人がともに生きていく社会に向けて、今、自分たちは何ができるのか、自分の企業は世界に何を提供していくのか。そんなことを各現場で、みんなで考えていくことで、あらためて今の仕事の意味を再確認し、より本質的な価値を生み出せるようになります。

 この連載コラムでは、こうしたことを考え、議論し、踏み出していける企業、職場にどうしたら変われるのか、そのとき一人ひとりの壁をどう超えていけばよいのか、イノベーションを起こせる組織づくり、人づくりという視点で、今、企業が考えるべきこと、取り組むべきことについて、書いていきたいと思います。

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