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ジェイフィールが考えるオンボーディング【インタビュー】

ジェイフィール2022.11.29

新しく会社に入ってきた社員の方がうまく馴染んでいけるようにサポートをする「オンボーディング」。実はなかなかうまくいっている会社が少なく、リモートワークによってさらに難しくなっているようです。

今回は、「オンボーディング」に関して、ジェイフィールの担当者である和田誠司さんと北村祐三さんにお話を伺いました。


 
 

手厚い「会社」適応と手薄な「職場」適応

 
 

-       本日はよろしくお願いします。ジェイフィールのプログラムの中に「新人オンボーディングプログラム」がありますが、そもそも「新人のオンボーディング」に注目するようになった背景を教えて下さい。



和田さん
2017年の年末だったと思いますが、ジェイフィールのメンバーがZ世代の方々と対話をする機会があり、そこで「新人の職場適応がうまくいっていない、実は社会問題なのではないか?」という気づきがありました。さらに詳しくヒアリングをすると、新人の配属先が決まったあとのケアがほとんどなく、さらには「一旦若手の個性は置いておいて、まずは会社色に染まってもらう」という前提で新人が職場に迎えられることが多いということがわかりました。それについていけない若手の早期離職やひどいケースでは適応障害の発症といった問題が起きていました。

北村さん
人事は「会社適応」はやるけど「職場適応」はやらない、というところが多いんですよね。
「うちの会社はこういう会社で、この部署はこんな仕事をしていて、仕事をするうえで必要な知識はこんなものですよ。」というのは伝えているんだけど、実際に配属が決まった後はノータッチ。職場でどのように関係を作るのかなどは現場まかせになっているのが現状です。

和田さん
入社から配属先が決まるまでは手厚いんです。だいたい2ヶ月くらい新人研修期間があって、そこから配属先が決まります。それで配属先が決まって実際に独り立ちし始めるまでの10ヶ月くらいの間、適応策をしっかりやれているところは少ないと思います。
海外だと、職場適応のために人事が長期的に関わってくれたり、いろんな人とランチをしたりと、適応策が当たり前のようにたくさんあるんです。
日本でも、職場で一対一で相談できるお兄さんお姉さんを一人つけましょうという「OJTリーダー」はあるんですが、相性の良し悪しがあって、そこの関係性が悪いというだけで離職につながってしまうケースもあります。



-       離職につながるほうが会社にとって痛いと思うのですが、こうなってしまうのはどういう理由なんでしょう?



北村さん
「配属が決まってからは現場の話だよね」というのが人事の視点。一方で現場は現場で忙しくて新人が入ってきても十分なケアができない状態。そして、新人はそういう状態に何も言えない。そういったそれぞれが戸惑っている状況があると思います。

和田さん
それぞれ価値観が違うので、昔は「飲みに行こうぜ」「ありがとうございます!」である程度済んだことが、最近では、新人を誘っても「家に帰ってゲームするので」という返答だったりするんです。そうなると「もう誘っちゃいけないのかな」となりがちです。そしてこういうやりとりが続くと、どう喋ったらよいのかわからなくなってしまう。一方で新人は、「なんで話してくれないんだろ、もっと関わってほしい」と思っていたりするんですが、上司にはなかなか言えなかったりします。こういうすれ違いでお互いの関係がギクシャクし始めます。



リモートワークで加速する職場不適応

 
 

-       コロナ禍でリモートワークが増えましたが、その影響はありますか?
 
 

和田さん
2020年にコロナ禍でリモートワークが定着したときに、大手13社にヒアリングした結果、心を病む人や離職に関する相談をする人が増えていることがわかりました。原因を聞いていくと、「リモートワークのせいで一緒に働いている感が持てない」だったり、職場に配属されて以降、職場にうまく馴染めないという、先程から話している職場適応の問題がリモートでさらに難しい状態になっているという背景がありました。

北村さん
リモートによって新人同士も繋がれなくなってしまった、というのもあると思います。愚痴や不満を共有する相手もいない状況で、OJTリーダーのことはよく知ってるけど、その他の先輩のことは知らず、職場の中で繋がりがない状態というのが今起きていることではないでしょうか。

和田さん
ここに「20年度の新人オンボーディング施策の成果」という調査結果があるのですが、「うまくいった・ややうまくいった」が全体の8%だったんです。以下、「変わらない」や「苦労した」という会社は、配属先が決まって以降は施策が乏しく、「リモートワークだから、こういうところをケアしてね」という説明などもなかったとのことです。

 

 


 

次世代育成3.0「共に育つ」

 

 
-       これまでの問題点がさらに浮き彫りになった形ですね。ここからは「では、どうすればよいのか?」ということを聞きたいです。ジェイフィールのアイデアを教えてください。


 
和田さん
ジェイフィールが提案しているのは、この図の右上にあたる「共に育つ」と書いて「共育」という概念です。


この図では、縦軸に「個人・チーム」、横軸に「育てる・育つ」という軸で新人教育を整理していて、これまでの新人教育とこれからの新人教育を示しています。

「次世代育成1.0」は、高度経済成長期の日本で、新人が入ってきたらみんなで可愛がる、その代わりに新人を会社に染め上げるみたいな育成方法です。バブルが崩壊した後は、成果主義が導入されて「自分で考えよう」という自律型社員を推奨する「次世代育成1.5」になります。言葉は良いですが、実際は「ほったらかし」の状態です。育つ人は育つけれど、残念ながら競争に馴染めなかったりすると、うまくいかずに差がどんどん開いてしまいます。それではまずいよね、ということで見直されたのが「次世代育成2.0」で、1on1やOJTリーダーを入れたりして、「一人の担当者が育てる」というかたちを取るようになりました。ただこれもさっき言ったように、相性の良し悪しがあって難しいケースも散見されました。

そこで今言っているのが「次世代育成3.0」というコンセプト、「共に育つ」という概念です。これまでは上司・先輩が新人を育てるという一方向の育成でしたが、これからは、それぞれがそれぞれの個性を尊重して、上司・先輩も新人から学ぶ、そういう双方向の矢印があると考えています。
 


 

役割で動かない「おせっかい」というキーワード

 

 
-       「共に育つ」ために重要な要素は何でしょう?



和田さん
キーワードは「おせっかい」です。
「困っていたら、手を差し伸べる」というのは、古き良き日本の文化だと思うんですよね。先輩も新人もそれぞれ「〜〜さんのためになにかできないかな?」と、お互いのために自ら考えて動いて手を差し出すことが大事になってきます。おせっかいは実は、新人や先輩、マネジャーなどの役割とは関係がありません。

北村さん
そうなんです。ある意味、「役割で動いていない」ということなんじゃないかなと。自分はOJTリーダーだから新人に関わらなきゃいけない、自分は新人だからこうしなきゃいけないとか、そういうのをとっぱらうことが大事だと思います。逆に、OJTリーダーじゃないから関わらなくて良いんだという前提も置かない。このように「役割として」ではなく、「人として」お互いがどう繋がっていけるかという視点がポイントで、それを「おせっかい」という形で表現しているのかなと。

和田さん
「役割で動いていない」というのは本当に大事なポイントですね。
とある会社では、人事が呼びかけて有志の育成チームを作って、そこで「どうしたら良い育成ができるのか」ということを部署関係なく巻き込んで取り組んだ事例があります。そこでは、配属されたチームや新人にヒアリングをかけて何に困っているかを引き出して、それに対する企画提案を行ったりしています。
実際に行ったこととして、新人に「各部署の仕事を紹介する」という社内広報誌をつくる仕事を任せたそうです。そうすると、自然と各部署との交流ができてその部署の理解が深まるし、新人の「自分はこうしたい」というのを支えてくれる育成チームがあるおかげでチャレンジしやすくなる。一年後の成果発表のときには副社長が「リモートでここまでできたのはすごい。」と評価してくださったとのことです。まさに有志によるおせっかいが功を奏した事例です。
 

 
-       職場に配属された後も人事がしっかりケアをしていて、さらに「役割」でない有志のチームが育成を考えたことがとても良いですね。
 
 

和田さん
別の企業の例では、職場内で新人とメンター、マネジャーという三位一体の体制を作ったところもあります。メンターはさっきのOJTリーダーです。これも良い関係性で、メンターは新人の「らしさ」を尊重するスタンスができていて、新人が「こうしてみたい」というのに対してしっかり向き合うし、マネジャーは定点観測的にすこし目標がずれてしまっていたりしたら口を挟んで軌道修正したりする。
こういうことをやっていると、良い意味で新人が新人っぽくなくなるんですよ。ちょっと説明が難しいんですけど...。

北村さん
新人が遠慮していないんですよね。マネジャーに対する遠慮もあんまりなくて。それに対してメンターもマネジャーも自然と受け入れているんです。なので、3人でワークをすると新人がいきなり「どうしましょうか」と口火を切ったり、「いや、ぼくはこう思います」とかも普通に言う。そういう意味で新人らしくない感じに変わっているんです。

和田さん
こういう三位一体、トライアングルで共に育つ関係性を作れていることが大事なことだなと思います。これはお互いの個性を尊重しているからできることです。「こういうふうにやりたい」と言ったときに「いいからこうやれ」ではなく、「その意見面白いね、ちょっと計画に組み込んでみようか」というようにできるかの違いなのかなと。
 
 

「おせっかい」の障壁

 
 

-       いろんな会社がこのような関係性を作れたらと思いますが、逆に「おせっかい」を実現するのに難しい点はあるんでしょうか?
 

 
和田さん
「おせっかい」は手間がかかるという意見はヒアリングの中でありました。入ってくる新人が10人、20人とかであれば対応できるけど、それが100人を超えてくるとなかなか難しくなってしまうと。ただ、ある大手企業の事業部人事の方は「全部をやれなくても、職場適応のために説明会をするとか、そういう部分的に採用できることはある」とおっしゃっていて、やっぱりやらない理由を考える前にできることがあるかを検討することが大事ですね。やれば必ず成果は出ますので。

北村さん
「新人は育てるものだ」という考えからなかなか抜け出せないんじゃないかなとも思うんです。これは抜け出せないことを責めているんではなくて、何十年もそういう仕組みでやってきているんだから簡単には変われないよね、という、ある意味しょうがないことだとも思います。その視点のままだから、新人のやりたいことを聞いたり、新人との交流を深くするということになかなか思いが至らないし、想像もできない。
ですので、そこはもう時代のトレンドとして「これまでとは違うんだ」ということを腹落ちしないと難しいのかなと思いますね。
「オンボーディング」という言葉自体、近年定着してきた言葉ですからね。昔は「ちょっと飲みにいこうや」である程度は馴染めた成功体験があるので、そういうことも必要なかった側面はあるかもしれません。

和田さん
ある会社では、今でも工場勤務と本社勤務では価値観が違うみたいです。工場勤務は昔ながらの「飲みに行こうぜ」スタイルでオンボーディングがなくてもコミュニケーションができている一方で、本社勤務はそれが難しいために、きちんとした職場適応のためのオンボーディングが必要になる可能性が高いでしょう。

 
 

ジェイフィールの社内オンボーディング


 
 
-       オンボーディングが必要な場合は、まずはその背景に納得して、できることを探すというのが大事なんですね。ジェイフィールも最近新しいメンバーを迎えたと聞きました。実際に社内のオンボーディングはどうでしたか?
 

 
北村さん
キャリア採用なので、これまで話してきた新人ではないという前提で聞いてください。
新メンバーの青木さん(ジェイフィールに2022年8月からジョインしてくれました)の人柄もありますが、順調にできていると思います。今回はジェイフィールメンバー全員と早めに繋がれたというのが良かったです。みんなで、自分の取扱説明書(トリセツ)というのをつくって青木さんを交えた小グループで共有するみたいなことをやりました。
例えば僕の場合「何か困っていたら、声をかけてもらえたほうが嬉しい人です。」というふうに。そういうのを全員と共有してお互いの人となりを知るみたいなことは大事ですよね、話しかけやすくもなります。
 

 
-       「トリセツ」おもしろいですね。社内でオンボーディングを行ったことで、再発見はありましたか?


 
和田さん
人によって施策を工夫しないといけないなとは思いました。
青木さんは自己開示をしてくださる方だったのでうまくいきましたが、こういうことに抵抗がある方だったら、少しアプローチを変えなければいけない。だから、今年の施策が成功したから、来年の新人も成功するかといわれるとそうではないので、そこはしっかり考えていく必要があるなと思いました。
ただやっぱり「お互いを知る」というのは共通して大事なことですね。その広さ、深さ、スピードは人によるので調整が必要かなというところです。

北村さん
「人による」というのも、新人もそうだし誰がメンターになるかもそうですよね。相性があるので。だから「お互いがなにか、良いパターンを探りにいく」というのをしないと難しいのかなと思います。どっちかが押し付けはじめちゃったり、こうじゃないと嫌だとなってしまうとすれ違ってしまいますからね。
「どういう関わり方が良い?」とか、お互いのために「もし違うと思ったら言ってね」とか、そういう認識合わせをすると良いのかなというのは、今回の気づきでした。
 


-       ジェイフィール社内の「おせっかい」で大事にしているポイントはありますか?



北村さん
「育てる」モードでおせっかいをやかないということですね。そのモードだと、いろんな人が「こうしたほうが良いよ」と言うので、新メンバーが混乱してしまいます。そうではなく「共に育つ」モードでおせっかいをやくと、「どんなことやってきたの?」とか、そういう「人として繋がりたい」という方向になるんです。

和田さん
今北村さんが言ったことはすごい重要なことだと思います。「育てる」モードのもう一つの弊害として、新人がどんどん依存していってしまうというのもあります。たしかに最速で育つかもしれないんですが、自分で問いを生み出すことが難しくなってしまったりもします。

 
 

好奇心を持って、声をかけてみる


 
 
-       「共に育つ」という考えがベースにあってはじめて良い「おせっかい」ができるのですね。そろそろまとめに入ろうと思います。最後に、これを読んでオンボーディングの施策をやってみようかなと思っていただけた方へ、オンボーディングのはじめの一歩と、改めてオンボーディングの大切な点を教えて下さい。



和田さん
まずは、「その人を知りたいな」という好奇心を持って触れてみることなんじゃないかなと思います。Z世代は〜、上の世代は〜とかありますが、実際その人個人に触れてみると全然違ったりしますよね。

北村さん
ぼくも同じで、「どんな人なんだろう」と好奇心を持つことが一番最初なのかなと思います。遠慮しないというか、とりあえず声をかけてみる。まさか、それだけでハラスメントとは言われないので(笑)。
人は意外と最終的には繋がりたいと思っているので、「アクションをすればリアクションがある」という、そういう前提を持つことが大事なんじゃないかなと思います。

和田さん
コミュニケーションがうまくいっていないところは、基本的にすごい仕事に追われているんですよね。そういう職場では新人の加入は喜びじゃなくて、「負担」なんです。そういうところはなるべく早く仕事を覚えさせるという「育てる」モードになるので、新人も早く仕事を覚えなきゃと染まっていって、新人ならではの視点みたいなものがなくなってしまう。そういうのはもったいないなと思いますね。

北村さん
「無駄を排除して効率的に物事を進める」という風潮があると思うんですが、かえってそれが非効率を生んでいるかもしれませんね。今の和田さんの話だと、そういう企業にとって新人と関わるのは無駄な時間で、自分の効率を落とす作業だと見えてしまっているわけです。ただ、このことが5年、10年先の非効率を生むかもしれない、ということは忘れてはいけないなと。
そんな気がしているので、「余白を作って無駄を楽しみましょう」みたいなのが、オンボーディングに限った話ではないかもしれませんが、大事なんじゃないかなと思いました。



-       本日は、ありがとうございました。



ジェイフィールの「新人オンボーディングプログラム」の詳細はこちら


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