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“当たり前”の中に潜む、学校の対話の不在
コラム「教育と社会の分断をつなぐ」第3回

村田 太2025.09.08

こんにちは。ジェイフィールの村田です。

日々の仕事の中で、「対話」していますか?
会議やミーティング、1on1、雑談など、話す機会はたくさんある。
でも、「本当の対話」は、どれくらいできているでしょうか?

そもそも、「対話」とは何を指すのでしょう。会話や議論とどう違うのでしょうか?

今回のコラムでは、学校という場における「対話の意味」について探ってみたいと思います。

では、「対話」とは何でしょうか?
ジェイフィールでは、『The Intelligence Advantage』(マイケル・マクマスター著)をベースに、こう定義しています。

対話とは、参加者の誰もが持っていない何かを創出することを意図して行われる会話のこと。

つまり、既存の意見をぶつけ合うのではなく、“わからなさ”に向き合いながら、共に新しい意味や方向を生み出していく。それが、私たちの考える「対話」です。
そしてこの「対話」こそが、今、学校現場でも必要とされているのではないでしょうか。

近年、企業だけでなく学校教育においても「対話」の重要性が注目されるようになりました。  実際、2020年度から実施されている学習指導要領では、子どもたちが自ら学び、他者と関わりながら理解を深めていく学びのプロセスとして、「主体的・対話的で深い学び」が掲げられています。  

子どもたちの学びに“対話”が取り入れられるなら、教える側の先生たちにも「対話」が求められるのは自然な流れでしょう。  とはいえ、先生たちは日々多忙な中、ゆっくり言葉を交わす時間を確保するのも難しい。そんな現実もあります。これは、企業の現場でも同じかもしれません。

だからこそ、対話は違いを越えて、共に考え、共に創るプロセスとして、人が集まり協働するすべての場でこそ、大切にされるべきものなのだと思います。学校でも、企業でも。
そしてそれは、働く人どうしの“関係性”や“自分らしさ”を支える土壌にもなるはずです。

学校という組織では、企業以上にこれまでの”当たり前”や“慣習”が優先されがちな面もあります。  たとえば、数年ごとの人事異動で新しい学校に赴任すると、「あれ?何か違うな」と違和感を覚えても、  「この学校ではこれが普通だから」と、その違和感をそっと飲み込んでしまう場面もあるようです。

そうした日常の中で、問い直すことも、立ち止まって語り合うことも、つい後回しになってしまう…。  この構造は、実は学校も企業も、それほど違わないのではないかと感じています。

先月、ある自治体の中堅教員(30〜40代)を対象とした研修を担当しました。  
公立の小学校・中学校・特別支援学校・高等学校から集まった先生方に、「当たり前を問い直す」というワークをしてもらいました。

ワークの中で出てきた声の一部をご紹介します。

先生なんだから…

「休めない、失敗できない、弱みを見せてはいけない」

任せたら…

「下手に任せてできなかったらどうしよう」「自力でやった方が早いかも」

若手育成の責任は…

「育てるのは上司や先輩。でも、若い先生の方が子どもに近いし、学ぶことも多いはず」


こうした声は、学校ならではの“当たり前”でしょうか?
あるいは、私たち自身の中にも、似たような“思い込み”があるのかもしれません。

こうした声に共通するのは、「感じている違和感はあるけれど、それを出せる場がない」という感覚でした。  
まさに、“対話の不在”が、現場の中で静かに進行していたのです。

とはいえ、学校現場に“対話の芽”がまったくないわけではありません。  
実際に、研修に参加した先生方の声からは、小さな兆しが確かに見えてきました。

「一層の良好な同僚性、関係性の構築のために、こまめな対話と、職務に対する肯定的かつ積極的なフィードバックを大切にしたいと考えています」

「まずは、身近な(例えば同じ部屋の先生方)などと、これまで以上に声かけを行い、自分や相手の感情や置かれている状況を把握していきたいと思います」

「自分自身がイキイキと働く大人として子どものモデルになれるよう努めていきたいです」

こうした言葉から見えてくるのは、  “対話の再開”が関係性の改善や先生自身のウェルビーイングにもつながるという実感です。  

特別な取り組みではなく、「ちょっとした声かけ」「感情への配慮」から、  対話が始まっていく。そのことが、日々のしんどさや孤立感を和らげ、  先生自身の“いきいきとした在り方”へもつながっていくのだと、強く感じました。

学校における“対話の不在”とは、単なる情報不足や連携ミスではなく、  関係性の希薄さ、孤立感、そして先生自身の余白のなさと深くつながっています。  

だからこそ、「対話」は“関係性”と“先生のウェルビーイング”を回復する入り口になるのかもしれません。
対話を通じて、先生自身が少しでも軽やかに、笑顔で働けるようになったら・・・。  
その変化は、子どもたち、同僚たち、そして学校という場全体に、静かにやさしく、でも確かな影響を与えるはずです。

次回は、こうした日々の現場にある静かな疲弊に目をこらしながら、  
「先生のウェルビーイング」という視点から、“つながり”と“希望”のありかを考えてみたいと思います。

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