小森谷 浩志2025.06.13
5月はジェイフィールにとって、とても意味深い1カ月でした。
創業以来、ジェイフィールの事業の根幹を支えてきた、リフレクションラウンドテーブル®(海外ではCoaching Ourselvesとして展開)の生みの親でもある、ヘンリー・ミンツバーグ教授とCOのファウンダーのフィル・レニール氏が6年ぶりに来日しました。
ジェイフィールメンバー総出でイベントの準備にあたり、5月21日-22日と、2日連続でのリアルイベントを開催しました。
そのうち、5月21日にジェイフィールのコミュニティスペースで開催された、フィルのイベントの詳細について、開催後記として、当日のファシリテーターも務めた、小森谷のレポートをお届けします。
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10年間の地道な積み重ね
三菱電機株式会社先端技術総合研究所、総務部人事課、採用・研修G、グループリーダーの新藤さんからのリフレクションラウンドテーブル®︎(この後RRTと表記)の事例は、10年間の地道な積み重ねが伝わってくる重厚なものでした。
RRTは先端技術総合研究所において2016年からスタート、途中、対象の拡大や変更がありながらも全ての課長が受講するプログラムとして位置付けられています。全課長が同じ経験を通じて、共通言語を持つことで、マネジャー個人の育成にとどまることなく、組織風土改革のソフト面における中核を担うプログラムに至っています。
同社では、過去10年、市場環境や経営環境の変化が激しい中、様々なの取り組みが行われてきましたが、先端技術総合研究所独自の取組として、イノベーションの創出、組織間のカベを越える、マネジメント力の向上を旗頭にRRTを行ってきています。特に「マネジャーが部下の感情に寄り添い、自由に研究活動を行い、成果が出る自走する組織」が重要なポイントとして据えられています。
RRTを受講者した方々の声を聞くと「感動して涙するくらいです」という新藤さん。3人の感想を紹介してくれました。
- 傾聴に関して、他受講者から多くを学んだ。1on1でキャリアアンカーを用いながら傾聴を行い、担当者から色々な想いを聞けた。各自の深いところで、何を大事にしているのか一緒に確認できたと思っている。何にモチベーションを感じているのか、言語化して相互理解できたことは、課運営上非常に参考になった。
- 自身の言動やマネジメントの不足点や改善点を客観的に確認するようになった。 部下の成長に対する興味が増し、ともに成長していきたいという気持ちが持てるようになった。 研修全体を通してマネジメントの重要性を再認識し、自身の発言や行動が部下に与える影響を考えるようになった。
- 「内省」と「成長」が自身のキーワードとなった。内省を繰り返し習慣化させる。そして、教訓を得るこのプロセスが日々の仕事の合間合間で行われることとなりました。自身に向けてもそうですが、グループ員への対応としては、成長がキーワードとなった。ベースが成長であり、その点を常に意識する必要があると感じた。
この3人の声からも、先述した組織風土改革のありたい姿に確実に歩みを進めていることが見てとれます。
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マネジャーのあり方の変化によって「対話」が立ち上がる
印象深かったエピソードの一つは、あるマネジャーが困ったときに、今までは自分を押し殺して頑張っていたが、RRT受講後は困っていることを素直に出して、相談するようになったということです。マネジャーのあり方の変化によって「対話」が立ち上がったといえそうです。一人抱えて頑張ることが必要なこともあるでしょうが、そればかりだとやがては孤立し、疲労困憊してしまいます。一人で閉じこもって疲弊していては、行き詰まってしまい、イノベーションどころの話ではありません。
自分の弱さも含めさらけ出すことの重要性は、近年経営学の領域でも注目されています。複雑さが増す環境において、一人ひとりが自らの限界を認識し、助けを求め、支え合い、自然と生まれる協働は、自分や自組織のこれまでの枠を超え、可能性を広げる契機になるといえます。
マネジメントをしていれば困りごとが尽きることは無いでしょう。しかし、助けてくれる誰かが側にいることは、大きな支えになります。近年は「マネジメントの罰ゲーム化」とまでいわれるくらい、マネジャーの責務は重く、業務は多大になっています。困りごとに対して一人で抱える「孤立」ではなく、「対話」のループを回していくことは、大きな分かれ道になることは確かです。そして対話の奥には、当日同席しレクチャーしてくれたRRT(世界展開名コーチングアワセルブズ)のファウンダーであるフィル・レニールがいう「試す(practice)と内省(reflection)」が原動力として息づいていることも看過できない重要な要点です。マネジャーが生み出した対話は組織の壁を越え、失敗を学びに変換し、イノベーションを創出するチームになる促進力とも言い換えられそうです。
三菱電機では、「Changes for the Better」を企業姿勢として大切にしています。これはRRTの産みの親ヘンリー・ミンツバーグ教授が日本のあり方として「革命(revolution)よりも『より良くしていく(make things better)』がいいのではないか」という提案とも重なります。
ミンツバーグは「コミュニティとは、仕事や同僚、そして自分たちの居場所を大切にし、この気持ちによってやる気が湧いてくるところである」とした上で「コミュニティシップとは、一人ひとりが自らコミュニティに参画し、個を尊重しながらお互いを結びつけ協働していこうとする意識」といいます。三菱電機の取り組みはコミュニティシップを育むことで広がる可能性を感じる時間となりました。
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