ジェイフィールは、良い感情の連鎖を起こすこと
人と組織の変革を支援するコンサルティング会社です
「その組織づくりは誰のため?」制度や仕組みの前に考えること【インタビュー】

ジェイフィール2023.10.16

組織の問題を解決しようと制度や仕組みを変えてみるけど、周りがついてこなかったり、途中で頓挫したりで、なかなかうまくいかない。誰だって居心地の悪い職場で働きたくないはずなのに。じゃあ、別の仕組みを入れてみようとあれこれしているうちに「あれ、結局なんのためにやっているんだっけ?」と分からなくなってしまう。そんな経験はありませんか?
今回は、「ジェイフィールが考える組織づくり」に関して、ジェイフィールの高橋克徳さんと村田太さんにお話を伺いました


 
 

「制度や仕組みの話」より前に

 
 
-       本日はよろしくお願いします。実は当初「人事制度」に焦点を当てたお話を伺おうとしていたのですが、制度や仕組みの話をする前にもっと大事なことがあるのでは?という問いがありました。そこにジェイフィールらしさというか、根幹にある想いみたいなものがあると思い、そのまま今回のテーマとさせていただきました。



高橋さん
ジェイフィールがやっていることは「文化を作る」ということなんですよね。
人の意識や行動原理が変わって、それが持続性のあるものになっていくと、働く人みんなの意識や働き方が変化する。そうすると一人ひとりの想いが出てきて、少しずつ文化が作られていく。

なので、制度や仕組みの導入が文化を作ることに寄与する場合にのみ、それをちゃんと維持できるようにしますが、制度の導入ありきではないというのが土台にあります。


村田さん
組織になんとなくただよう「雰囲気(ムード)」があって、それによってイキイキしたり、ギスギスしたりという働く人の「モード」があって、それがやがて「風土」になる。「ムード・モード・風土」とよく言っていますが、そういう根本の空気感のような組織感情が、実は組織づくりに大きな影響を与えているということは大事にしていますね。


高橋さん
コロナ以降、それまで下火だったジョブ型がまた再燃しました。会社を中心に据えて「あなたはこういう仕事をしてくださいね」と仕事を人につけるやり方です。リモートワークで人の管理が難しくなる中で「じゃあ、仕事を管理すればいいのでは?」という考えになったんだと思います。

ただ「根幹の課題ってそこなんだっけ?」と。それを進めて、はたして日本企業は良くなるのか、もっと良い会社が増えていくのか、という議論があったのかは疑問です。多くの企業はそれがないまま、とにかく目の前にある課題を解決するために、人事制度を変えようとしているのではないかと懸念しています。


 
 

主体性や創造性を奪っている原因

 
 
高橋さん
国の競争力を「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4つで測る「世界競争力年鑑(*1)」というものがあります。日本は、バブル期には1位だったのが、現在は30位台に落ちてしまっています。

各指標を見ると、「経済状況」と「インフラ」は悪くなく、むしろしっかりしています。ただ「政府の効率性」と「ビジネスの効率性」が非常に低い。「ビジネスの効率性」は、企業が変化に対して柔軟であるか、俊敏に動いているか、新しい仕組みを取り入れているか、その根幹にある価値観が開かれているのかなどを表します。要するに、変化に対する適応力が非常に低いというのが、世界から見た日本なんです。

ジェンダーギャップ指数なんかを見ても、日本の女性活躍推進はその典型的な例ですよね。女性の管理職を増やそうとしても、男性中心、仕事中心のモデルの中に女性を当てはめて増やそうとしているのが現状です。トラブルがあったら残業をしてでも対応しなきゃいけない、子供のイベントがある日でさえ休まず出勤しなきゃいけない、一番早く退勤するようではダメ。これでは本当の意味での活躍は難しいですよね。

女性に限った話ではなく、若手の場合でも、組織が中心となって「予め用意した箱の中で頑張ってくださいね」という仕事の与え方が、人の主体性とか創造性みたいなものを奪ってしまっていて、それが変化に対する適応力の低下にも繋がっているんじゃないかと。


*1 世界競争力年鑑(IMD)


 
 

「人」を起点にした組織づくりへ

 
 
高橋さん
だからこそ、「組織のために人がいる」という組織起点の考え方ではなく、「人のために組織がある」という逆の発想にしていくことが必要なんだと考えています。

お互いが想いで繋がっていて一人ひとりの良さを知っているから、互いにその良さを活かし合うことができます。そういう関係性だからこそ対話が生まれて、ビジョンが浮かんでくる。浮かんだビジョンに踏み込む人がいて、それを後押しする人がいて、新しい仕事が作られる。こうしていつしか組織は、一人ひとりが主体性や創造性を持って踏み出せるようなプラットフォームに変わっていくんです。

もう5、6年も前の話になりますが、こういう考えで「人のための組織づくり」というメッセージを世の中に発信しました。


-       当時の周囲の反応はいかがでしたか?


村田さん
メッセージをきちんと理解いただけた方には一定の反響があったと思います。ただ「人のための組織づくり」という言葉が一人歩きして「従業員に迎合しなければいけないの?」といった、本来の意図でない別のニュアンスで伝わってしまったこともありましたね。


高橋さん
「一人ひとりがやりたいことをやれることが大事。それを組織がサポートすればいいんだ。」という解釈もありましたね。

この世界観だと、組織の一人ひとりがバラバラに好きなことをやるわけですから、それを続ければ「私はこれしかやりたくない、これはやりたくない」というわがままな人たちの組織になってしまいます。でも、それはやっぱり違うんじゃないかと。

「人のための組織づくり」は、「社会は一人では成り立っていない」という考え方が大前提なんです。人は関係性の中で生かされているし、生きているという感覚がないままだと、自分にとってのみ良いことを組織が与えるものだと捉えてしまう。だから自分も含め、周りの人も幸せになるための組織をどう作るかっていう発想を持たないと、孤立する人がどんどん増えていきます。


-    「人のための組織づくり」の「人」というのは、自分だけじゃなくて、周りの人も含めての「人」なんですね。


高橋さん
「人が大事なんだ」という文脈では、人的資本経営(ヒューマンリソースマネジメント)という考え方が広まっています。要するに「人にちゃんと投資をして、人の価値を上げる努力を会社が行っているのかを開示しよう」というもので、これ自体悪いことではありません。

ただ、開示されるから環境や制度を整え、実態を変えるということが先行して、そこにいる一人ひとりの感情を大切にし、一人ひとりが会社を通じてより良く生きることを支援する場をつくり、それが会社全体の未来をつくることになるという強い思いが共有されていなければ、人と組織がともに幸せになる論理に転換できるのでしょうか。

制度の怖さはこういうところにあります。仕組みは現状を変えるということにおいて一時的なパワーを持ちます。でも根本の部分で、一人ひとりが繋がっていないと必ずどこかで頓挫してしまうんですよね。


村田さん
逆に、さきほど話に出たジョブ型でも、関係性ができていればうまくいく事例を見てきました。外資系なんかはジョブ型を取り入れている典型例ですが、そこではいわゆるチームビルディングやチームボンディングなど、人と人の関係性を繋ぐことにすごくお金を使うんです。人は関係性の中で生きていて、それが崩れるとうまく行かないということをわかっているんじゃないのかなと思います。

結局のところ、そこにいる人たちがどう繋がるのかというコミュニケーションプランみたいなものをきちんと作らないと、どんな制度を入れても難しいんだろうなというのは感じていますね。


 
 

ジェイフィールのアプローチ

 
 
-       制度ありきではなく、根本のつながりが大事ということですね。ジェイフィールは「人のための組織づくり」において、どのようなアプローチをしていますか?


高橋さん
主に、3つのことをやっています。

まずはそこで働いている一人ひとりが意志を持って意見を言えること、経営層とも対話ができて、経営層もそれを受け止められるような組織の雰囲気を作ることです。

ある会社から「若い世代にメッセージを伝えるために理念・ビジョンを作りたい」という相談をいただいたことがあります。20代後半の若い世代がどんどん辞めていってしまうという悩みを抱えていたんですね。そこで調査をすると「この会社には未来がない」といった書き込みがたくさんあったんです。若手に詳しくインタビューすると、現場の若い人たちが疑問を言葉にしても、上が「いや、そうは言ってもね…」と動かない。若手は、結局何をするにしても上が決めて下に落としていく、全ては上次第なんだと感じてしまっている状況でした。

この現状をはじめて経営層が認知して、「ああ、自分たちがそういう姿勢を持っていたら、組織は変えられないんだ」と理解して、そこから少しずつ変わっていったんですよね。それから、組織のビジョンを作って語る一方で、一人ひとりの話を聞こうと、1on1での対話を重ねてもらいました。今では、働いている人たちが対話を通していろんなことを変えていける組織になって、「GreatPlaceToWork(*2)」にランクインするまでになったんですよ。


次が経営層へのアプローチです。
ここでは、自分たちの在り方を問い直して、今の時代に必要なリーダーシップを改めて考えてもらう「リアルリーダーズ(*3)」というプログラムをします。
相手に働きかけて相手を動かすような以前のリーダーシップではなく、自分自身の在り方を変えること。また、自分自身が嘘偽りなくありのままの自然体でいることが、周りに良い空気感や安心感を与えて良い方向へ変わっていくということに気づいていただく。

360度フィードバックなんかをすると、やっぱり、良かれと思ってした発言や行動が、実は周りの多様性を阻害していたということが結構あるんですよね。
プログラムを通して、自分の立ち振る舞いが周囲にこんな影響を与えていたのかと少しずつ気づいて、「では、これから自分はどんな存在になったら良いのかな」と考えてもらえるようになります。


3つ目が人事制度へのアプローチです。ここでやっと制度の話になります。
多くの人事制度には上下の階層があって「評価基準から見て、あなたは今このレベルですね」という感じでレベル分けをするのが一般的です。ジェイフィールが考える人事制度はそうではなく、一人ひとりの多様性を引き出すこと、またそれらをお互いが活かし合うことに重きを置いていて、これを「持ち味づくり」と呼んでいます。

多様な価値の出し方を自分自身が見つけて、場面場面で自分の得意なことを発揮していく。その中で、自身の存在価値、存在実感を持てるようになったら高く評価される。「持ち味づくり」は、そういう発想の制度ですが、いくつかの会社へ導入してとてもうまくいっている印象です。持ち味がいろんな形で発揮できるようになると、周りの人たちが信頼してくれて、もっと一緒にやりたいと思ってくれます。一人ひとりの得意を見つけて、お互いが応援しあって、良い仕事に変えていく。そうなるといつしか、やらされ感ではなく、それぞれが主体性や創造性を持って踏み出せる組織に変わっていきます。

以前は「仕事」のことを「為事」と書いて、「しごと」と読んでいました。本来「しごと」とは、誰かに仕えることではなく、誰かのためになにかを為すことなんですね。
人事制度も、自ら仕事を作って動き出す人を作っていくとか、そういう人たちの持ち味を繋いでいくリーダーを作るとか、そういう「周囲のためになにかを為す組織をつくるためにある」という発想にならないと、日本企業は一向に良い方向へいかないのではないでしょうか。


*2 GreatPlacceToWork

*3 ジェイフィールの「リアルリーダーズプログラム」はこちら


 
 

ジェイフィールの根幹の想い

 
 

村田さん
コロナ以降、多くの人が会社や職場の意味を改めて考えるようになりました。
ワークライフバランスと言われてもう10年ほど経ちますが、今はバランスをいかにとるかというより、自分の人生の中で仕事をどのように意味づけるか、何のために働いているのかということを問い直していると感じます。


高橋さん
リモートワークになって、家族と過ごす時間だったり、子育てを一緒にやることは、人生にとってすごく大事なんだと気づいた人たちがたくさんいたんだと思います。一方でこういう人たちが、会社ではどこか無理を強いられるという現状を見たときに、ここで働くことが本当に自分や家族の幸せに繋がるのだろうかと疑問を持つのは不思議ではありませんよね。


-       このことを一旦横に置いて、制度や仕組みを導入しようとしても人がついてこれずうまくいかないということになるわけですね。


高橋さん
そもそも、そこで働く人たちがこの会社にいたいと思う源泉や原動力がちゃんと組織にあるのかと、改めて問われていますよね。仕事が面白い、職場が楽しい、仲間がいるから自分の力が発揮できるとか。様々なつながりが生まれるのが良い組織だし、これから選ばれていく組織なんだと思います。

そういう組織であれば、「すべてが繋がっているんだ」という感覚を持って、みんなで応援し合っていくという目線になれる。その目線になれば、みんなが主体的に組織づくりに関わっていくし、組織というものをもう一度自分ごととして引き寄せて、幸せな組織づくりにコミットできるんじゃないかなと思います。

「人の幸せをみんなで考えて、みんなでより良くしていこうよ」という感情の連鎖を起こしていきたいというのが、ジェイフィールの根幹にある想いの部分です。
「人のための組織づくり」というのも、あくまで手段の一つで、これが結果的に人や組織、社会をよりよくするみたいなところに繋がっていく。そういう方向性を根本に持っておくことが大事ではないでしょうか。


-     本日はありがとうございました。

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