村田 太2025.12.10
230名を超える申込、当日194名がオンライン参加。
この数字だけ見ても、本テーマに向き合わざるを得ない現場の空気がひしひしと伝わってきた。分断は大きな衝突ではなく、むしろ静かな不協和音として職場に滲む。事前アンケートの生データは、その“しずけさ”の正体をあぶり出していた。
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- ハラスメント防止の意識が定着する中で『指導がしづらい上司・先輩』と『怒られるのが苦手な若手』が言いたいことを言えない
- 世代間にあるコミュニケーションのギャップにより、伝えるべきことが正確に伝わっていないような感覚がある
- 会社へ愛着のある社員が減少したよう感じており、分断の前触れではと危惧している
- 急激な事業環境変化に伴う組織風土が悪化傾向、ネガティブ思考に伴う負のスパイラルを感じる
- エンゲージメントサーベイ結果からも肌感覚で「分断する職場」を感じるものの具体的な施策へと落とし込めない
- コミュニケーションが取りづらい職場環境の中で、上司は頑張っていますが、もう自分自身が頑張れないと感じることも増えています
どの言葉にも、誰かが悪いわけではないのに、関係が少しずつ硬直し、言いたいことを飲み込み、職場の温度が下がっていく様子が滲んでいた。現場は頑張っている。しかし、その頑張りだけではどうにもならない壁に、少しずつぶつかり始めている。
だからこそ今回のセミナーでは、この状態を力技や根性論で突破するのではなく、何を手がかりに、どこから整えるのか、その順番と地図が丁寧に語られた。
静かに分断する職場を超える順番
高橋の話は、いきなり対話の技巧を扱うのではなく、まず「分断がどう生まれ、どう静かに広がるか」という現実の解像度を上げるところから始まった。そのうえで紹介されたのが、組織で共有すべき “5つのカギ” である。
5つのカギは、職場の土台そのもの
参加者のコメントにも、
- 関わる意識、つながる意味を考えたい
- 当たり前を問い直すことが大事だと感じた
- 一致ではなく重ね合わせるという視点が新しかった
という声が多く、職場の空気や前提を更新する必要性を強く感じていたことが伝わってきた。
5つのカギは、対話を成り立たせる“共通言語”であり、土台となる考え方だ。
そして核心へ。「7つの対話」が職場を拓いていく
セミナー後のアンケートを読むと、最も多くの参加者が手応えとして語っていたのは、まさに対話だった。
- 議論ではなく対話が必要だと腑に落ちた
- 対話が、なぜ大切なのかという点で理解が深まった
- 答えではなく、新しい答えを一緒につくるという発想が新しい
- 本音で対話できる関係をつくりたい
事後アンケートでは、
満足度96.5%、理解度97.9%、役立ち度99.3%。
数字以上に、“対話こそが自社の核心課題である”という実感が伝わってくる。
7つの対話は、立場を超えて新しい関係を紡ぐ“方法”でありながら、実際には働く人の感情や経験を丁寧に扱うプロセスでもあった。
ただし忘れてはいけない「関係革新」という土台
どれだけ対話の方法を知っても、関係が硬直したままでは本音は交わらない。
だからこそ高橋は、対話の前に必ず 「関係革新」 を土台として置いた。
本音を言い合える関係。
弱みを持ち寄っても壊れない関係。
“わかってもらえないかもしれない”という恐れより、“話してみたい”が勝つ関係。
この土台があってこそ、5つのカギが機能し、7つの対話が生きる。
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議論から対話へと“決める”
今回のセミナーは、分断を責めるためではなく、
「あ、うちの職場も静かにこうなっているかもしれない」
と気づくための時間だった。
議論を減らして、対話を一つ置いてみる。
正しさより重ね合わせを選ぶ。
その小さな決意だけで、職場の時間は静かに変わり始める。
諦めた瞬間に職場の未来は閉じてしまう。
けれど、対話を選ぶことで、人は再びつながり始める。
静かに分断する職場を、静かに変えていく。
その一歩が、この日のセミナーから確かに生まれていた。