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「人と組織の生き方を問い直そう」高橋克徳 連載コラム1
~コロナが企業経営に突き付けたこと~

高橋 克徳2023.08.03

コロナで気づかされたこと、ありませんか

コロナが蔓延し始めたのは2020年の春。
本当に、毎日決まった時間に出勤し、上司や周囲と話をしながら、日々の仕事をこな
し続ける日々が、大きく変わりました。会社に出社することがままならなくなり、会
社にいても従来のように気楽な対話ができず、仕事帰りに仲間と飲みに行くことも無
くなりました。オンライン中心の仕事になり、直接会社にも行かず、オンライン上だ
けの関係になっていった人も多くいるのではないでしょうか。
こうした変化はあなたの心にどんな影響を与えたのでしょうか。
ちょっとしたことが相談できない、助けてもらえない。雑談もないから仕事だけに追
われていく。孤独に仕事をする時間が増え、ますます作業をこなすだけの日々になっ
たと感じている人もいると思います。
一方、上司からのプレッシャーを感じることも減り、余計なコミュニケーションが減
ったことでストレスが少なくなり、しかも私生活の時間が増えて、気持ち的には余裕
のある生活になったと感じている人も多いと思います。
物理的距離が広がったことで、近い関係があるからこそ仕事にもやりがいを感じてい
た人は不安を感じ、逆に近すぎる関係が過剰なストレスだと思っていた人は解放され
る。
両面を同時に感じている人もいると思います。
少なくとも、これまでの距離感とは違う働き方、人との関り方を経験したことで、気
づかされたこと、悩ましくなってきたことがいくつもあるのではないでしょうか。
 □会社に行かなければ仕事にならないというのは、何だったんだろう?
 □コロナ禍でも満員電車で毎日通勤する自分の働き方、このままでいいのか?
 □ 上司が目の前にいなくても仕事が回る、上司って何のために必要なのか?
 □ 業務上必要のない人とはコミュニケーションしなくてもいいのか?
 □ この仕事に本当にやりがいや意味を感じていたのだろうか?
 □ ワークライフバランスといっても、結局は会社中心の生活になっていたのでは?
 □ この会社で働く意味って何だろう? この会社でなければならないのか?

一人ひとりが、仕事や会社との関係の問い直しを始めている

こんなことを考え始め、ワークの前にライフのあり方を考え直し、住む場所、暮らし
を変え始めた人が出てきたり、今の仕事、仲間、会社との関わり方を見直す中で転職
を決意して、新しい世界に飛び込んだり、本当に好きなこと、やってみたいことを副
業として始めたり、地域や社会の活動に参加してみたり・・・。
一人ひとりが、自分らしい人生の生き方を模索し始めているのだと思います。会社中
心、仕事中心の人生から、自分中心、人生中心の価値観へ。そうして人が主体的に色
々なモノとの関係を見直していく。そんな大きな転機を迎えているのではないでしょ
うか。

こうした変化への企業の向き合い方、これでいいの?
では、こうした変化に対して、企業はどう向き合おうとしているのでしょうか。
このままでは、社員のエンゲージメントが低下する、若手の離職が加速される。
社員のコミットメントを高めていかなければ、事業の発展もイノベーションも起きな
い。
もう一度、会社へのコミットメントの意識を高めるために、共通の目的、パーパスを
明確にし、会社で一緒に働くことの喜びを取り戻そう。そう言って会社に惹きつける
ための政策を打ち出しているところも多くあります。
一方で、一人ひとりのライフを第一に考え、その中で人が一緒に働く環境をつくろう
と、住む場所や働き方の自由度、裁量をさらに高めようとする動きや、そうした流れ
は止められないのだからこそ、仕事へのコミットメントだけは維持しようと、ジョブ
型の人事制度への移行を進める企業も増えてきています。
みなさんはこうした動きをどう受け止めていますか。
こうした施策の結果、会社への意識や仕事への思いが高まっていますか。
どこかに違和感を覚える人も多くいるのではないでしょうか。
確かに、人の仕事や職場、会社への関心や比重が薄れていくかもしれない。だから、
会社重視、仕事重視の姿勢をまた社員に押し付けてくるような、そんなメッセージや
施策にどこか共感、共鳴できない。
しかも、そこに社員の意思や思いを確認することなく、真の対話がなく、会社からの
一方的な方針として打ち出される。社員の心の変化と真剣に向き合おうとしているの
か。

企業経営、企業社会を根幹から問い直そう

今、企業に問われているのは、これまでの会社中心、仕事中心の人と組織の生き方を
、一人ひとりにとっても、ともに働く仲間にとっても、会社や社会にとっても幸せな
生き方にどう変えていくかということです。こうした問いと向き合い、会社のあり方
を根幹から問い直していくことが、今まさに必要なのではないでしょうか。
本稿では、こうした社員が感じている違和感を一つのきっかけにしながら、今までの
企業経営、企業社会の当たり前を問い直し、人が自立し、多様化していく時代の中で
、ともに働く組織をどのように運営していけばよいのか、一緒に考えていく、そんな
きっかけをつくれたらと思います。ぜひ、自分の心の声と会社の未来をどうつなげる
か、一緒に考えてみてください。

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